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horahareta

吉本ユータヌキのホームページ

明日も声を聞かせて

U思考 人生

2014/08/24 23時

 

中学2年生に進級した初日の終わり、担任の先生がホームルームで嬉しそうに言った。

『誰か!犬いらんか!犬!生まれたてのシーズーや!かわいいぞぉ!!』

 

僕は心臓をバクバクさせながら学校から家までの20分間、一度も休まず猛スピードで走って帰った。

 

我が家では、僕が小学校低学年の頃に近所の友達からもらったミドリガメしか飼ったことがない。初めてのペットに嬉しくて毎日大量のエサを投入し続けたのが原因なのか、2ヶ月程で死んでしまった。泣きながら河川敷にお墓を作った覚えがある。

それからもうペットを飼うのはやめようと思っていたが“シーズー”という名前に魅かれ、家族に『先生がシーズーくれるんやって!』と話を持ちかけた。

 

シーズーってなんや?どんな犬や?うるさないか?噛むんか?

うちの家族は犬が嫌いだった。下の階に住むおじいちゃんが飼っている犬がうるさい上にすぐに噛むからだ。エレベーターではできるだけ端に寄って逃げるようにするぐらい嫌悪感を抱いていた。

結局、その日“シーズー”の正体がわからないままもらうことに決めた。

 

なぜあの日、話が飼う方向に進んだのかはわからないが両親共に賛成だった。機嫌が良かったのかな。その週末には両親と妹が先生の家へシーズーをもらいに行く事に。僕はその日部活の試合で行けず、クタクタで帰ってきて家のドアを開けた瞬間に恐らくこれが“シーズー”なんだろうという動物が走ってきた。両手に収まる程の小ささ。

想像以上の愛くるしさに負け、その瞬間に親バカになった。

名前は【ちょこ】。茶色の毛が印象的で“チョコ”を連想したからだ。

 

歩くとどこにでも着いて来る。ご飯もモリモリ食べる。玄関でトイレをする。

翌朝、登校時に靴に違和感を感じ、脱いで中を覗くと“ちょこ”のうんちこと“ちょこボール”が仕掛けられている。策士だ。乾燥具合から予想するに昨夜の製造物であろう。その罠以外はなんの文句もなく可愛かった。

 

犬飼って〜!犬飼って〜!ちゃんと面倒見るから〜!散歩も行くから〜!

ドラマやアニメで子供がこんな条件を提示してねだっているシーンを見た事がある。

もちろん僕も『面倒見る。散歩に行く。』と約束し、毎日散歩に連れて行った。

外が好きなちょこは玄関のドアを開けると一目散にエレベーターホールに向かって走り出す。一度の躊躇もなく道を完璧に攻略している。ヒモが首にめり込んでいるのが当たり前。マンションの周りを一周するとベロを出してハァハァ言い出しエレベーターホールへ向かう。帰るタイミングも道筋も全て自分管理ができているどこか賢い犬だった。

ちなみに僕の面倒&散歩係は案の定4ヶ月で任務を終えた。

 

我が家に犬がいるということは何年経っても不思議で仕方なかった。

特別に好きでも、欲しかったわけでもなかったのにあの日から突然毎日ソファーのど真ん中を占領して寝ている。もしもらってなければ...という考えもなく、そこにいるということ自体が当たり前になっていて不思議だった。

 

そんな気持ちで今が15年目。今もこうしてこの記事を書いている最中、ちょこの鳴き声は聴こえる。

もう目は見えてなくて、足も動かなくなってしまった。小型犬の寿命がどれぐらいなのかはわからないが、恐らくもうおじいちゃんなのだろう。シーズーは目が大きくて白内障になりやすいとは聞いていたが、実際に黒目が白くなってきて壁に頭をぶつけて歩く姿にはショックを受けた。

そして、つい先日から足が動かなくなってしまった。その場に寝たきりでご飯は食べず、水も口に入れてあげてようやく飲んでいる。それでもか細い声ながら一生懸命鳴く。

 

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元々病気を患っていたので数年前から薄々覚悟はしていたが、もうさすがに危ないみたい。

去年の夏、昼寝から目を覚ますと隣でちょこが寝ていた。後ろ足を引きずりながらちょっとした段差を上り下りして隣の部屋から臭いだけを頼りに来てくれたのだと思う。嬉しかったり楽しかったりの思い出なんかを振り返ってしまうのも寂しいけど、今目の前で呼吸をして寝てくれている内に思い返したくなった。

 

受け入れるというのか、諦めているというのか、そんな自分に悔しさすら覚える。

いつの間にか当たり前になっていた家族の一員がいなくなってしまうのだろうか。終わりを考えたくないはずなのに。

 

今はただ、明日もちょこの鳴き声で朝が始まって欲しいと願っている。

 

 

 


2014/08/25 20:46

 

仕事から帰ってきたら冷たくなってました。

今日の朝まで鳴いてたのにな。呼んだら頑張って動いて反応見せてくれてたのに。

今、身体を綺麗にして冷やしてます。この後、火葬車が来てくれる。 

 

こんな時にブログ書いてる場合じゃないけど、今じゃないと残せない気がしたので顔見ながら追記してます。

 

15年間よく頑張りました。ほんまにありがとう。

それ以上ないかな。

 

明日から声が聞けないのはやっぱり寂しいな。

 

 

 

著者:吉本ユータヌキ (id:horahareta13)

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唐揚げと長澤まさみをこよなく愛す1986年製たぬき型人間。